移民のジノス(アダム・ボウスドウコス)は、レストラン「ソウル・キッチン」のオーナー。低料金に満足し、味に無関心な常連客。
同じ大衆向けのレストランの映画「パリのレストラン」とは違うのが、味。盛り付けはファミレス風。素材は冷凍食品。
舌鼓をうつ「パリのレストラン」の「プチ・マルグリィ」(Petit Marguery)のシェフは「教育はないが肉はわかる!」という街の職人のようなシェフ。
「バベットの晩餐会」(Babettes Gaestebud)のような芸術家のシェフの料理、その料理家の魂とは、もっともっと縁遠い物語。
恋人とは遠距離、ギックリ腰(椎間板ヘルニア)、仮出所の兄を雇うハメになったり、ついていないジノスは、ある日、一流レストランを解雇された天才シェフを雇うことになる。この兄貴、大酒飲みのウェイトレス、ルチア(アンナ・ベデルケ)に恋する。
Soul Kitchen - ritmi bollenti (兄イリアスとルチアの場面)
酒ずきな天才シェフのシェイン(ビロル・ユーネル)は、短気で偏屈、ナイフをダーツのように投げるのが得意。
Soul Kitchen - Torna subito(ナイフの場面)
単なるレストランと料理をテーマにした映画というわけではないなって。そこには職業意識がちゃんとあったよ。そして人種のるつぼ港町ハンブルグが舞台で、ソウルタウン。移民や庶民の事情がこっそり描かれていたし。
「この店はメニューは多いが全部同じ味。
俺なら4日替わりで4種類だけで、魂の食事を―。」
「確かに!」とジノス。
「ソウルキッチンだ!」と天才シェフ。
「確かに!」とジノス。
soul kitchen...gazpacho(解雇される場面)
"Soul Kitchen" Clip 2 VOSE (シェインをスカウトする場面)
Soul Kitchen - Corteccia afrodisiaca(料理をつくる場面)
肉はもちろん「デリカテッセン」(Delicatessen)の肉とは違う。大衆はすぐに天才シェフのシェインの料理を受け入れたと思う?
ここにはライフスタイルがちゃんと区別され描かれている。夜のクラブ、ファッション、セックス、嗜好と趣味、音楽、そしてマイノリティな人々。
Soul Kitchen - arriveranno in massa (シェインの料理を食べる客たち)
人間の欲望と快楽の道具の金、酒、煙草、料理、セックス、そして音楽と踊りは、ここ「ソウル・キッチン」の中で、世俗的で大衆的な日常。誰もヴーヴ・クリコやキャビアなんて求めないし、乱交のセックス場面はちっともロマンティックな男女愛さえ求めていない。
ただ一人、ジノスのハイソサエティな恋人ナディーン(フェリーネ・ロッガン)のイメージが違う。
ジノスの目の前。男はセックスシーンをカメラに収めるのが趣味。
PCの画面に登場するハイソな恋人ナディーン
Soul Kitchen - sesso in chat
いっちゃってるジノスの場面
Soul Kitchen - ein Kleiner Ausschnitt ...
レストランの物語は山ほどあるが、これほど脱ぎっぷりやセックスシーンに物怖じしない女優たちが揃った映画も珍しい。
Soul Kitchen - ecco come fregare il fisco(セックスシーン)
Soul Kitchen - Filmausschnitt (ソウル・キッチンでの乱交シーン)
伊丹十三の「タンポポ(Tampopo)」でのグルメヤクザ(役所広司)と海女(洞口依子)の牡蠣の場面、さらにグルメヤクザ(役所広司)と情婦(黒田福美)の王様ゲームで卵の黄身を口移しするするシーンや彼女の裸体にのせた活エビを紹興酒漬けにする場面なんか、若い時代の僕には驚いた。
「タンポポ」は食感と触感の食事とセックス。→動画 「タンポポ」のグルメ&セックスシーン
映画「パリのレストラン」の黒人女性ビムドゥは、ただ一人マイノリティを演じていた。差別される側の人間だけど、差別ではなくちょっと淋しい感じで。
移民たちが多い、低層階級のライフスタイルには、天才シェフのシェインの料理は「ガラ」じゃない。
ところがDJセットから流れる音楽の威力がシェインの料理を評判にした。従業員のルッツ(ルーカル・グレゴリヴィチ)はバンドマンで、彼らがリハーサルをすると人が集まってくる。
Soul Kitchen - Non c'è il cuoco? E chi se ne frega! (バンドのリハーサルの場面)
SOUL KITCHEN - Making of Clip 2 (バンドの撮影風景)
移民たちが多いこの街では、いろんな国の音楽が流れてくる。ソウル・ミュージックは、もともとブルースが原典。あれはスピリチュアル(黒人霊歌)、フィールドハラー(労働歌)から発展したもので、その民族のライフスタイルが背景。
Party Breaks im Soul Kitchen (ソウル・キッチンのパーティでの場面)
Jan Delay - Disko (Soul Kitchen Edit) (パーティの音楽と踊りの場面)
ゴスペルはプロテスタント系で、奴隷たちの心の拠り所。ジャズ、リズム・アンド・ブルース、ロック、ヒップホップ、レゲエなんかブラック・ミュージックの仲間で、黒人のマイノリティな環境から生まれてきた。
この映画音楽には、アフロ・アメリカン系の音楽、R&Bやソウルが使われた。
大成功した「ソウル・キッチン」は、投資家(ウド・キアー)の手に渡ってしまう。不動産会社に勤める旧友ノイマン(ヴォータン・ヴィルケ・メーリング)は、「ソウル・キッチン」の土地を狙い、ジノスに連絡をとる。
「ヴィルヘルムスブルクのインダストリー通り」と答えるジノス。
やってきた彼らは兄イリアスと賭けをして、まんまと「ソウル・キッチン」を手に入れてしまう。
ウド・キアー、かっこいい。悪役だけど。いや、悪役だから。
存続の危機に、立ち向かうジノスたち。マイノリティな人々が住む場所を追われたのとおなじように、彼らも「拠り所」を盗られてしまった。
そのフィルムはこちらから。
SOUL KITCHEN - Clip 2 (賭けの場面)
あとは映画、DVDをみてください。
ソウル・キッチン 公式サイト
ファティ・アキン Fatih AKIN (監督) インタビュー(1-3)
映画「ソウル・キッチン」 オフィシャルニュース
■ソウル・キッチン 音楽 DISC 1 全曲フルで聴けます。
01.RATED X / KOOL & THE GANG
レイテッド・エックス
02.HICKY BURR / QUINCY JONES FEAT. BILL COSBY
ヒッキー・バー
03.I DON'T KNOW / RUTH BROWN
アイ・ドント・ノウ
04.BROWN BAG / IVAN "BOOGALOO JOE" JONES
ブラウン・バッグ
05.WE GOT MORE SOUL / DYKE & THE BLAZERS
ウィ・ガット・モア・ソウル
06.GET THE MONEY / MONGO SANTAMARIA
ゲット・ザ・マネー
07.DON'T DO IT / SYL JOHNSON
ドント・ドゥ・イット
08.GET DOWN / CURTIS MAYFIELD
ゲット・ダウン
09.TO SXOLEIO / OLYMPIANS
トゥ・スコレイオ
10.I WANT TO BE YOUR MAN / ZAPP & ROGER
アイ・ウォント・トゥ・ビー・ユア・マン
11.THE CREATOR HAS A MASTER PLAN / LOUIS ARMSTRONG
ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン
12.IT'S YOUR THING / ISLEY BROTHERS
イッツ・ユア・シング
13.DISKO / JAN DELAY
ディスコ 動画 Jan Delay - Disko (Soul Kitchen Edit)
■DISC2
0ソウル・キッチン 音楽 1.WALKING IN DUB / BURNING SPEAR
ウォーキング・イン・ダブ
02.SOUNDHAUDEGEN / SILLY WALKS MOVEMENT FEAT. JAN DELAY
サウンドハウデーゲン
03.FRAGKOSYRIANI / LOCOMONDO
フラッゴシリアーニ
04.MANOLIS O HASIKLIS / SHANTEL
マノリス 動画 Shantel - Manolis (Soul Kitchen Soundtrack 2009)
05.MISSION OF LOVE / LOVE RAVERS
ミッション・オブ・ラブ
06.SING SONG GIRL / ER FRANCE
シング・ソング・ガール
07.MOON SHAYN / BAD BOY BOOGIEZ
ムーン・シャイン
08.ARCILLA / STEVEN PFEFFER
アルシーラ
09.TO BLUES TOU PALIOKARAVOU / PAVLOS SIDIROPOULOS
トゥ・ブルース・トウ・パリオカラヴー
10.STEVE'S LA PALOMA / STEVE BAKER
スティーブズ・ラ・パロマ
11.SISTERS KEEPERS DUB / TURTLE BAY COUNTRY CLUB
シスターズ・キーパーズ・ダブ
12.GANG UND GABE / BROKE BUT BUSY
ギャング・ウンド・ギーベ
13.DAS LETZTE HEMD HAT LEIDER KEINE TASCHEN / HANS ALBERS
ダス・レッテ・ヘムト・ハット・ライダ・カイナ・タッシェン
料理やシェフ、レストランの映画って、まじにダークなもののほうが多いかも。
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